放射線が恐ろしいのは判りますが、非論理的な差別も宜しくないです。


 以下、山本弘氏の日記より転載。

 19日、厚生労働省は、福島県で採取された原乳と茨城県で採取されたホウレンソウから、食品衛生法に基づく暫定規制値をこえる放射性物質を検出したと発表した。
 それによると、福島県川俣町の酪農農家の原乳から、規制値の3〜5倍のヨウ素を検出、茨城県高萩市など6つの市町村のホウレンソウから、規制値の2.5〜3倍のヨウ素、規制値より4.8%多いセシウムを検出したという。
 おそらく、風に乗って飛び散った微量のヨウ素セシウムが、牛の食べた牧草や、ホウレンソウの表面に付着していたのだろう。

 この記事を読んで不思議に思ったのは、「ヨウ素131の半減期は8日だ」ということが書かれていないことだ。
 ヨウ素131はベータ線を出して崩壊し、キセノン131という安定した無害な元素に変わってゆく。8日でその量は半分に、16日で4分の1に、24日で8分の1に……80日で約1000分の1になってしまう。
 だからヨウ素131が検出されたからって、何の心配もない。すぐに食べずに、何十日か冷凍保存すればいいだけだ。放射線は自然に基準値以下に下がる。牛乳だってチーズなどの長期保存できる製品の原料に回せばいい。
 セシウム半減期が長いからなかなか放射線値は下がらないが、規制値より4.8%多いだけなんて、洗えば落ちる程度のレベルである。洗って出荷すればいいではないか。

 そもそも、こうした規制値を数倍ぐらいオーバーしたって、何の危険もない。『ニセ科学を10倍楽しむ本』(楽工社)でも書いたが、こうした食品の安全基準値というのは、無毒性量(その食品を一生食べ続けても害が出ない量)をさらに100で割ったものなのだ。つまり基準値を100倍以上もオーバーしたものを何年間も毎日毎日食べ続けて、ようやく害が出るのである。
 基準値を少しばかり超えた食品を何回か口にしたぐらいで、健康に影響なんかあるはずがない。
 実際、産経新聞の報道にはこうある。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110319/dst11031923060121-n1.htm
> 放射線医学総合研究所千葉市)の吉田聡・環境放射線影響研究グループリーダーによると、このホウレンソウの数値を人体への影響を示す単位である「シーベルト」に換算した場合、0・24ミリシーベルトになる。

> 人体に影響があるのは一度に100ミリシーベルトを受けたときとされており、小鉢一人前のホウレンソウを100グラムと仮定すると、今回のホウレンソウは4200人分を口にしないと人体に影響を及ぼさない計算になる。

> 吉田リーダーは「妊婦や子供など、放射性物質の影響が大きいとされる人たちについても、摂取しても問題がないレベルだ」と冷静な対応を呼び掛けている。

> 同様に、ホウレンソウから検出されたセシウム524ベクレルを、シーベルトに換算すると0・0068ミリシーベルトになるという。吉田リーダーは「この程度が人体に入っても、まったく影響はないと考えていい」と話す。

 たとえば、食塩(塩化ナトリウム)の半数致死量は、体重60kgの人の場合、180〜210gである。これだけの塩をいっぺんに摂取すると、半数の人が死んでしまうのだ。だからと言って「塩はこわいから買わない」という人はいまい。料理に少し使うぐらいなら安全であることを、誰もが知っている。
 砂糖だって、酒だって、食用油だってそうだ。大量に摂取したら人体に有害である。適量使えばいいだけのことだ。
 放射線だって同じなのである。

 スーパーでは福島県産のコメが売れ残っていると聞いた。福島県だというだけで危険だと思って買うのを控える人が多いらしい。
 何と愚かなことだろうか。そのコメが収穫され、出荷されたのは、原発事故の前に決まっているではないか!
 確かに放射線を警戒する必要はある。しかし、安全基準値を下回る放射線を恐れたり、汚染されているはずのない食品まで忌み嫌うのはおかしい。基準値以下の放射線で害を受けるなんて、科学的にありえないことだ。
 
 科学的にありえないことを信じているのだから、これは「オカルト」と言うべきである。
 
 まあ、放射能を恐れる心理は分かるし、ただ心の中で不安に思っているだけならかまわない。
 しかし、「福島県産の農作物は食べない」とかいう実際の行動に発展するのは、絶対にいけない。スーパーなども販売を見合わせないでほしい。それは現地の農業関係者にダメージを与えることになり、復興を遅らせることになる。
 もちろん出荷前に放射線量を確認し、規制値を上回るものは出荷停止しなくてはならない。しかし、安全と判断されて出荷されたものに関しては、じゃんじゃん食べるべきである。

 もうひとつ、今朝のニュースで見たのだか、福島県いわき市では、食料品や日用品が届かなくて大変に困窮しているのだという。
 その大きな原因は、トラック運転手たちが放射能を恐れて、いわき市に行くのを拒否してるからなのだそうだ。

 ちなみに、いわき市放射線レベルは、毎時0.73マイクロシーベルト

 1年間ずっと浴び続けても、0.73×24×365=64000マイクロシーベルト(6.4ミリシーベルト)で、CTスキャン1回分以下である。
 ブラジルのガラパリでは、砂に天然のトリウムが含まれているため、住民は年間10ミリシーベルト被曝している。それでも住民はぴんぴんしている。それどころか、放射線リューマチに効くと言われ、観光地として繁栄しているそうだ。いわき市放射線量はそれより低いのだ。

高自然放射線地域 ガラパリ(ブラジル)
http://www.taishitsu.or.jp/radiation/guarapari-a.html

 日本でも、ラジウム温泉ラドン温泉など、放射線を売り物にした温泉が日本各地にある。つげ石材株式会社のホームページによると、日本各地のラジウム温泉放射線測定値は、毎時0.9〜2.0マイクロシーベルト程度だという。いわき市放射線ラジウム温泉以下なのだ。

http://www.tsuge-sekizai.co.jp/product_bedrock01.html

 つまり「いわき市に行くがこわい」と言っている運転手は、「ラジウム温泉に入るのがこわい」と言っているのと同じなのだ。 
 トラック運転手なんて、丸一日も市内にいないはずだ。1時間で0.73マイクロシーベルトなら、24時間では17マイクロシーベルト。胸部X線集団検診による被曝量が50マイクロシーベルトだから、その3分の1である。

 繰り返す。これは「オカルト」だ。「放射能がこわいからわき市に援助物資を届けない」という行動に、科学的根拠などまったくない。

 間違った科学知識のせいで被災地住民が苦しめられているのだとしたら、由々しき問題である。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1693261379&owner_id=365376
http://hirorin.otaden.jp/e163281.html



・治療断られた、放射線で偏見
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1550246&media_id=2
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110329k0000m040129000c.html

《福島第1原発放射線検査「義務付け」 偏見で過剰反応

スクリーニング検査の証明書がなければ入所できない避難所も=福島市内で2011年3月28日午後2時8分、平川昌範撮影 福島第1原子力発電所の事故に伴い避難した人たちが、放射線量を確認するスクリーニング検査で「異常なし」とする証明書を提示しなければ医療機関で受診できないケースがあることが分かった。避難所に入所する際、スクリーニング検査を事実上義務付けられるケースも。専門家は「非科学的な偏見による過剰反応だ」と指摘している。【平川昌範、阿部周一】

 原発から半径20〜30キロの自主避難促進区域にある福島県南相馬市原町区から福島市に避難してきた会社員、岡村隆之さん(49)は24日、市内の医療機関で8歳の三女の皮膚炎の治療を断られた。理由はスクリーニングの証明書がないこと。市販薬で何とかしのいだが、岡村さんは「ただでさえ不安な避難生活。診察を断られたことが、どれだけショックだったか」と話す。

 福島県は13日、県内13カ所でスクリーニング検査を始めた。17日からは、その結果を記した県災害対策本部名の証明書も発行している。しかし、本来は個人が自らの放射線量を知って安心するために行われる検査の証明書が、避難してきた人が受け入れてもらうためのお墨付きになっている実態がある。

 南相馬市などから約1300人が避難している福島市の「あづま総合運動公園」の避難所では、17日から入所の際にスクリーニングの証明書提示を求め、証明済みの目印にバッジを付けることになった。避難者が一時帰宅した際には再入場時にも検査を求めており、出入り口には説明文が張り出されている。

 避難所の担当者は「他の避難者から不安がる声が多かったため始めた。疑心を事前に摘み取るために必要だと考えている」と説明する。収容人員の多い他の避難所でも同様にスクリーニング検査を求める所がある。

 証明書の使われ方について、県地域医療課は「県内外の受け入れ施設から『証明書が欲しい』と求められた。避難される方の利益を考えると証明書は出さざるをえなかった。混乱を招いたが、証明書で利益を受ける人の方が多く、現状では発行を続けざるをえない」という。

 だが、南相馬市の中心部にある相双保健所の笹原賢司所長は「これまで8000人以上を検査したが、除染を必要とする基準値を超えた人はいなかった。南相馬が汚染地域のように扱われるのはおかしい」と憤る。震災後、福島県に入った広島大病院高度救命救急センター長の谷川攻一教授(救急医学)は「原発での特殊な作業に従事する人を除けば、現時点で基準値を超える放射線量が出る人がいるはずがない。証明書がなければ必要な医療を受けられないなどというのは言語道断。過剰反応は厳に慎んでほしい」と話している。》


 追記。

 生産者や現地の農協などからの、直接の取り寄せが、可能かも知れません。

 私も、電話して訊いてみます。

 こんなのも有りました。
 産地応援・特別企画『新鮮野菜十種+おまけ』セット。
 結構な量の由です。
http://bit.ly/hdsuZz
http://bit.ly/dT2J4T

 私も注文致しましたが、要送料です。
 山口県だと700円強。
 2セットまで同じ金額です。
 まとめ買いや共同購入等も如何でしょうか。

 恐ろしいのは判りますが、非論理的な差別も宜しくないです。


 以下、山本弘氏の日記より転載。

                                                                                                                        • -

 19日、厚生労働省は、福島県で採取された原乳と茨城県で採取されたホウレンソウから、食品衛生法に基づく暫定規制値をこえる放射性物質を検出したと発表した。
 それによると、福島県川俣町の酪農農家の原乳から、規制値の3〜5倍のヨウ素を検出、茨城県高萩市など6つの市町村のホウレンソウから、規制値の2.5〜3倍のヨウ素、規制値より4.8%多いセシウムを検出したという。
 おそらく、風に乗って飛び散った微量のヨウ素セシウムが、牛の食べた牧草や、ホウレンソウの表面に付着していたのだろう。

 この記事を読んで不思議に思ったのは、「ヨウ素131の半減期は8日だ」ということが書かれていないことだ。
 ヨウ素131はベータ線を出して崩壊し、キセノン131という安定した無害な元素に変わってゆく。8日でその量は半分に、16日で4分の1に、24日で8分の1に……80日で約1000分の1になってしまう。
 だからヨウ素131が検出されたからって、何の心配もない。すぐに食べずに、何十日か冷凍保存すればいいだけだ。放射線は自然に基準値以下に下がる。牛乳だってチーズなどの長期保存できる製品の原料に回せばいい。
 セシウム半減期が長いからなかなか放射線値は下がらないが、規制値より4.8%多いだけなんて、洗えば落ちる程度のレベルである。洗って出荷すればいいではないか。

 そもそも、こうした規制値を数倍ぐらいオーバーしたって、何の危険もない。『ニセ科学を10倍楽しむ本』(楽工社)でも書いたが、こうした食品の安全基準値というのは、無毒性量(その食品を一生食べ続けても害が出ない量)をさらに100で割ったものなのだ。つまり基準値を100倍以上もオーバーしたものを何年間も毎日毎日食べ続けて、ようやく害が出るのである。
 基準値を少しばかり超えた食品を何回か口にしたぐらいで、健康に影響なんかあるはずがない。
 実際、産経新聞の報道にはこうある。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110319/dst11031923060121-n1.htm
> 放射線医学総合研究所千葉市)の吉田聡・環境放射線影響研究グループリーダーによると、このホウレンソウの数値を人体への影響を示す単位である「シーベルト」に換算した場合、0・24ミリシーベルトになる。

> 人体に影響があるのは一度に100ミリシーベルトを受けたときとされており、小鉢一人前のホウレンソウを100グラムと仮定すると、今回のホウレンソウは4200人分を口にしないと人体に影響を及ぼさない計算になる。

> 吉田リーダーは「妊婦や子供など、放射性物質の影響が大きいとされる人たちについても、摂取しても問題がないレベルだ」と冷静な対応を呼び掛けている。

> 同様に、ホウレンソウから検出されたセシウム524ベクレルを、シーベルトに換算すると0・0068ミリシーベルトになるという。吉田リーダーは「この程度が人体に入っても、まったく影響はないと考えていい」と話す。

 たとえば、食塩(塩化ナトリウム)の半数致死量は、体重60kgの人の場合、180〜210gである。これだけの塩をいっぺんに摂取すると、半数の人が死んでしまうのだ。だからと言って「塩はこわいから買わない」という人はいまい。料理に少し使うぐらいなら安全であることを、誰もが知っている。
 砂糖だって、酒だって、食用油だってそうだ。大量に摂取したら人体に有害である。適量使えばいいだけのことだ。
 放射線だって同じなのである。

 スーパーでは福島県産のコメが売れ残っていると聞いた。福島県だというだけで危険だと思って買うのを控える人が多いらしい。
 何と愚かなことだろうか。そのコメが収穫され、出荷されたのは、原発事故の前に決まっているではないか!
 確かに放射線を警戒する必要はある。しかし、安全基準値を下回る放射線を恐れたり、汚染されているはずのない食品まで忌み嫌うのはおかしい。基準値以下の放射線で害を受けるなんて、科学的にありえないことだ。
 
 科学的にありえないことを信じているのだから、これは「オカルト」と言うべきである。
 
 まあ、放射能を恐れる心理は分かるし、ただ心の中で不安に思っているだけならかまわない。
 しかし、「福島県産の農作物は食べない」とかいう実際の行動に発展するのは、絶対にいけない。スーパーなども販売を見合わせないでほしい。それは現地の農業関係者にダメージを与えることになり、復興を遅らせることになる。
 もちろん出荷前に放射線量を確認し、規制値を上回るものは出荷停止しなくてはならない。しかし、安全と判断されて出荷されたものに関しては、じゃんじゃん食べるべきである。

 もうひとつ、今朝のニュースで見たのだか、福島県いわき市では、食料品や日用品が届かなくて大変に困窮しているのだという。
 その大きな原因は、トラック運転手たちが放射能を恐れて、いわき市に行くのを拒否してるからなのだそうだ。

 ちなみに、いわき市放射線レベルは、毎時0.73マイクロシーベルト

 1年間ずっと浴び続けても、0.73×24×365=64000マイクロシーベルト(6.4ミリシーベルト)で、CTスキャン1回分以下である。
 ブラジルのガラパリでは、砂に天然のトリウムが含まれているため、住民は年間10ミリシーベルト被曝している。それでも住民はぴんぴんしている。それどころか、放射線リューマチに効くと言われ、観光地として繁栄しているそうだ。いわき市放射線量はそれより低いのだ。

高自然放射線地域 ガラパリ(ブラジル)
http://www.taishitsu.or.jp/radiation/guarapari-a.html

 日本でも、ラジウム温泉ラドン温泉など、放射線を売り物にした温泉が日本各地にある。つげ石材株式会社のホームページによると、日本各地のラジウム温泉放射線測定値は、毎時0.9〜2.0マイクロシーベルト程度だという。いわき市放射線ラジウム温泉以下なのだ。

http://www.tsuge-sekizai.co.jp/product_bedrock01.html

 つまり「いわき市に行くがこわい」と言っている運転手は、「ラジウム温泉に入るのがこわい」と言っているのと同じなのだ。 
 トラック運転手なんて、丸一日も市内にいないはずだ。1時間で0.73マイクロシーベルトなら、24時間では17マイクロシーベルト。胸部X線集団検診による被曝量が50マイクロシーベルトだから、その3分の1である。

 繰り返す。これは「オカルト」だ。「放射能がこわいからわき市に援助物資を届けない」という行動に、科学的根拠などまったくない。

 間違った科学知識のせいで被災地住民が苦しめられているのだとしたら、由々しき問題である。

                                                                                                                            • -

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1693261379&owner_id=365376
http://hirorin.otaden.jp/e163281.html



・治療断られた、放射線で偏見
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1550246&media_id=2