在留許可と行政と司法

違法滞在という犯罪を追認していいのかとか、行政が司法を否定するのかとか言っている人がおいでのようですが。
ずれた発言です。

「在留特別許可」とは、違法滞在者への恩恵的な措置であって、法律に明確に存在する制度であり、既に数多の数、出ているものなのです。

「在留特別許可」は、適法な退去命令が発せられているとき、つまり退去事由が「存在する」場合に、在留資格の「無い」人に対し、法務大臣の裁量(「恩恵」)で、在留を「特別に」許可することができます。
法務大臣に認められている、合法な権限の行使なのです。

「在留特別許可」が、どういう場合に出てどういう場合に出ないかは、これは、法律上は法務大臣の裁量であり、多くの場合は、実際は、大臣の下の、入管とその役人達の判断によると思われます。
法以外にも、政令とか、省令とか、庁令とか、規則とか、独自の判断基準とかが有る様子ですが。
こうした、法以外のルールは、政権によっての変化が有り得るのは当然ですが、今回の政権交代以前も、現場の役人の、確か局長級の判断でも変更されてきたみたいです。

尚、大臣であっても、完全に自由裁量という訳ではないようです。
例えば、日本人の内縁関係の配偶者(入籍はしていない)(国際結婚をする場合、それが偽装ではないと認定する場合の要件である、同居の事実が有ると確認出来る関係)に、法務大臣が、在留特別許可を出さないのは適法とは言えないと、裁判所が判決を出した事例も有ります。


今回の件の流れは以下の通りです。
本名の後に記載された数字は、当時の年齢です。

1997年 
・姉妹の母親(本名:馬素萍、43)が中国残留孤児子孫(残留孤児の子供)とし、その配偶者である父親(本名:焦長友、39)及び姉妹が正規に入国。
中国残留孤児の子供、及びその配偶者や子供も、定住資格の対象になる。

2002年 
・手続きに不備が有った由で、大阪入国管理局、姉妹の母親の、孤児の親族との血縁関係が疑わしいとして、彼女とその家族の上陸許可を取り消す。

2003年9月
・一家に国外退去が命じられる。
・父親強制収容。

2003年12月
・一家、「退去命令取消請求訴訟」(在留資格が無いので退去しろと言われたのが不当と思うので、退去命令の取消の請求をする、そういう趣旨の訴え)を、大阪地裁に提訴。

?年
・1、2審とも敗訴。

2006年
最高裁、上告棄却。敗訴確定。

?年
・父親と母親及び三女(来日後出生)強制送還。
・日本の生活に慣れた姉妹は、入管に毎月出頭することなどを条件に、送還の為の収容を一時的に解く「仮放免」の状態で滞在を続ける(これは、制度上、合法)。
その後、大学に進学。

2009年10月9日
千葉景子法相が、北浦加奈(本名:焦春柳、21)と北浦陽子(本名:焦春陽、19)に、特別在留許可。
退去命令が取り消され、在留資格「定住者」で1年間の在留が認められる。


一家の裁判について考えますと、同様の事を争った他の判例から見ましても、こういう場合、裁判所は、積極的に退去命令を出す訳では有りませんのです(ちなみに、この件自体の判決の詳細は、私はまだ見つけていません)。
その内容は、「前の大臣の退去判断(中国残留孤児の子孫、及びその配偶者であるという、然るべき在留資格が無いと判断したこと、そしてそれに基づいて「出て行ってくれ」という指示をしたこと)は、大臣としての"裁量逸脱"をしていません。退去命令を下した行政の判断に、違法性は無いです。よって、原告の取消請求を棄却します」という風に判断していた筈です。

この種の裁判の争点は、「大臣の退去命令は適法か違法か」です。
こういう場合、裁判所は、「法務大臣の裁量についての判断」を出すものなのです(上記の様に、「適法とは言えない」と判断して、退去命令を否定する事例も有ります)。

退去命令それ自体を発するのは、あくまで行政の仕事です。

強いて言うと、「これこれの在留許可を出したことは、違法と考える」という旨の訴えが起こされ、「その件についての大臣の裁量は、適法か違法か」を裁判所が検討し、そして「裁量権を逸脱する。適法とは言えない」と判決を出すことは、理屈では、一応、有り得るかも知れません。
ですが、その在留許可によって、直接被害を受ける人は有り得ない以上(言い換えると、直接被害を受ける人が、訴えを起こすことが出来ます)、実際には、そういう事例は無いと、断言出来ます。

尚、無関係な人間が、「あの在留許可によって精神的苦痛を受けた。違法だと考えるから差し止めてくれ」とか言って、訴えを起こしても、惨敗します(或る件について直接には無関係な人間が、抽象的な損害を理由に訴訟を起こして敗れた事例が、幾らでも有るようです)。
引き受ける弁護士も居ないかと考えます。


そして、ここがかなり重要と考えますが、勝訴した行政(国)側が、裁判で不存在が確定した一家に対する在留資格Aとは「別個の」在留資格Bを、姉妹に対して「新たに」付与したのが、今回の特別在留許可処分です。

新しい大臣が、裁判中は存在していなかった、然るべき在留資格を、姉妹に与えたのです。

つまり、大臣は、裁判の結果を覆した(逆らった)のではなく、前の大臣(或いは入管)の、姉妹に対して特別在留資格を出さなかった判断を変更したと言えます。

尚、一家が敗訴した裁判が、法務省が、一家に対して、在留特別許可を出さなかったことについて争点にしていたかどうかは、判決の詳細が見つかっていないので不明です(この点を争っていたとしても、「在留特別許可を出さないのは適法」或いは「出さないのは違法」という判断はしても、「出すべきではない」と指図することは、有り得ない筈です)。


この件について、「法務大臣の判断がおかしい」だの、「三権分立を否定している」だの、「独裁政権になる」だの、「法治が崩壊する」だの、「人治へ移行」だの、「これだから民主党は」だのと言っている人が、ネットを見ますとウヨウヨおいでですが(多分、その中には、戦前の日本を全肯定している人が、結構居るのでしょうがねえ?)。
「≪在留特別許可≫という制度が問題である」と言っている人は、滅多においでではありません(尚、私は、別に問題とは思いませんが)。
皆さん、過半は、事情を調べもせず、気分で発言しているのでしょうね。


在留特別許可は、ネットで調べてみましたら、年間でおよそ2000件、違法滞在の外国人に対して出されている由、書いてあるページが有りました。
また、以下のページでは、更に多い数字が有りました。
数年前(つまり自民党政権時代)のデータです。
http://www.geocities.jp/kumustaka85/20071007_zairyu.html

それが、どのような状況で出て、どのような状況で撥ねられているか、法務省の入管のウェブサイトなどでまとめてあるページが有りますから、ネットで調べてみると良いです(付記 コメント欄に追加致しました)。


以下は、私見ですが。

両親については、残留孤児関係の制度を、意図的に虚偽をもって悪用していたとしたら問題ですし、そうでなくても、手続きに不備が有ったなら手落ちです。
当時も今も大人なのですから、送還で妥当かも知れません。
まだ小さい、3人目の子供も、親が健在なのだから、彼らが引き続き育てるべきです。この年齢なら、いずれは、中国語も不自由無く操れるようになることでしょう。

ですが、問題の2人は、10年以上も前(1997年)、7歳と9歳の子供の頃に、親に連れられて日本に来て(つまり違法行為についての責任は問えない)、現在、19歳と21歳(成人目前と成人)になっているのです。
人生のほぼ半分を日本で過ごし、大学にまで入っているのです。
最初の退去命令が出た折(2003年9月)には、既に、13歳と15歳、中高生でした。
人生で一番頭の柔らかい時期を、日本で過ごしていたのです。
日本語も、当然身に付けている筈です。
一方、中国語の方は、聞くのと話すのはともかく、読み書きについては、ほとんど忘れてしまうことが予想されます。
中国語には表音文字が無く、表意文字(漢字)がびっしりです。8歳前後当時の知識を、実生活上ではほとんど使用しないのに、6年後に至るまで、いちいち覚えていられる訳が有りません。
この段階で中国に戻ったとしたら、中国語の読み書きは、小学1年レベルからやり直しという過酷な状態になると考えられます。

姉妹は、当時も、現在も、これから日本でやりたいことも有ったでしょうし、友達も、彼氏も出来ているかもしれません。
その、密度の濃い、数年から10年以上もの蓄積を、親の不始末が原因で、当人の希望に反し、強制的に消滅させ、今更、全く別の環境である中国でやり直せというのは、過度に厳しすぎ、彼女達の権利を不当に侵害する(或いは、彼女達のその権利を容認することによる日本側の不利益は存在しない)と言う判断でありましょう。

自分ではなく親の所為で、不安定な身の上になった人間2人を、国が、或る程度保護した、と言えば良いのですかね。

ところで。
この件で、千葉法相や、民主党を、「法治」や「三権分立」を理由に罵っておいでの皆さんは、かつて、検察への「指揮権発動」(これも合法には違いないです)をやらかし、身内への法の追求を潰してのけた自民党のことは、如何お考えになっておいでなのでしょうね。


参考
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1255158580/

e-politics - 報道記事-外国人政策-在留資格のない外国人
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/295.html

レコードチャイナ:国外退去処分の中国人姉妹に特別在留許可
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=36250&type=1&p=2&s=no
asahi.com朝日新聞社):中国人の大学生姉妹に在留特別許可 国外退去命令覆す - 社会
http://www.asahi.com/national/update/1009/OSK200910090126.html

中国人姉妹 敗訴後に在留許可
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=985784&media_id=2
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091010-00000004-maip-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000007-rcdc-cn

≪(毎日新聞 - 10月10日 02:12)

 残留孤児の子孫として両親と来日後に在留資格を取り消され、国外退去を命じられていた奈良市在住の中国人姉妹に、千葉景子法相は9日、在留特別許可を出した。最高裁で退去命令の取り消し請求訴訟の敗訴が確定しており、支援団体によると、敗訴確定後に在留を認められたのは埼玉県蕨市のフィリピン人、カルデロンのり子さん(14)ぐらいで、極めて異例。

 姉妹は、帝塚山大1年、北浦加奈(本名・焦春柳)さん(21)と、大阪経済法科大1年、陽子(同・焦春陽)さん(19)。退去命令は取り消され、定住者資格で1年間の在留が認められた。在留は独立して生計を営むなどの条件を満たせば更新できる。大阪入国管理局や支援団体によると、日本での就労が可能になり、再出入国許可を得れば中国などへの出国も認められる。

 姉妹は97年、母親(47)が「長崎県出身の中国残留孤児(故人)の四女」として、家族で中国・黒竜江省から正規に入国。その後、大阪入国管理局が「残留孤児とは血縁がないことが判明した」として一家の上陸許可を取り消し、03年9月に国外退去を命じられた。

 父親(43)が強制収容され、一家は同年12月、退去処分取り消しを求めて大阪地裁に提訴したが、1、2審で敗訴し、最高裁も上告を棄却。父親は大阪府内の高校に通う姉妹を残し、妻と来日後に生まれた三女の3人で中国に強制送還された。

 加奈さんは「紙一枚だが、(退去命令を受けてから)6年間の重みを感じる」。陽子さんは「家族に早く伝えたい」と話した。【田中龍士、茶谷亮】 ≫


違法滞在という犯罪を追認していいのかとか、行政が司法を否定するのかとか言っている人がおいでのようですが。
ずれた発言です。

「在留特別許可」とは、違法滞在者への恩恵的な措置であって、法律に明確に存在する制度であり、既に数多の数、出ているものなのです。

「在留特別許可」は、適法な退去命令が発せられているとき、つまり退去事由が「存在する」場合に、在留資格の「無い」人に対し、法務大臣の裁量(「恩恵」)で、在留を「特別に」許可することができます。
法務大臣に認められている、合法な権限の行使なのです。

「在留特別許可」が、どういう場合に出てどういう場合に出ないかは、これは、法律上は法務大臣の裁量であり、多くの場合は、実際は、大臣の下の、入管とその役人達の判断によると思われます。
法以外にも、政令とか、省令とか、庁令とか、規則とか、独自の判断基準とかが有る様子ですが。
こうした、法以外のルールは、政権によっての変化が有り得るのは当然ですが、今回の政権交代以前も、現場の役人の、確か局長級の判断でも変更されてきたみたいです。

尚、大臣であっても、完全に自由裁量という訳ではないようです。
例えば、日本人の内縁関係の配偶者(入籍はしていない)(国際結婚をする場合、それが偽装ではないと認定する場合の要件である、同居の事実が有ると確認出来る関係)に、法務大臣が、在留特別許可を出さないのは適法とは言えないと、裁判所が判決を出した事例も有ります。


今回の件の流れは以下の通りです。
本名の後に記載された数字は、当時の年齢です。

1997年 
・姉妹の母親(本名:馬素萍、43)が中国残留孤児子孫(残留孤児の子供)とし、その配偶者である父親(本名:焦長友、39)及び姉妹が正規に入国。
中国残留孤児の子供、及びその配偶者や子供も、定住資格の対象になる。

2002年 
・手続きに不備が有った由で、大阪入国管理局、姉妹の母親の、孤児の親族との血縁関係が疑わしいとして、彼女とその家族の上陸許可を取り消す。

2003年9月
・一家に国外退去が命じられる。
・父親強制収容。

2003年12月
・一家、「退去命令取消請求訴訟」(在留資格が無いので退去しろと言われたのが不当と思うので、退去命令の取消の請求をする、そういう趣旨の訴え)を、大阪地裁に提訴。

?年
・1、2審とも敗訴。

2006年
最高裁、上告棄却。敗訴確定。

?年
・父親と母親及び三女(来日後出生)強制送還。
・日本の生活に慣れた姉妹は、入管に毎月出頭することなどを条件に、送還の為の収容を一時的に解く「仮放免」の状態で滞在を続ける(これは、制度上、合法)。
その後、大学に進学。

2009年10月9日
千葉景子法相が、北浦加奈(本名:焦春柳、21)と北浦陽子(本名:焦春陽、19)に、特別在留許可。
退去命令が取り消され、在留資格「定住者」で1年間の在留が認められる。


一家の裁判について考えますと、同様の事を争った他の判例から見ましても、こういう場合、裁判所は、積極的に退去命令を出す訳では有りませんのです(ちなみに、この件自体の判決の詳細は、私はまだ見つけていません)。
その内容は、「前の大臣の退去判断(中国残留孤児の子孫、及びその配偶者であるという、然るべき在留資格が無いと判断したこと、そしてそれに基づいて「出て行ってくれ」という指示をしたこと)は、大臣としての"裁量逸脱"をしていません。退去命令を下した行政の判断に、違法性は無いです。よって、原告の取消請求を棄却します」という風に判断していた筈です。

この種の裁判の争点は、「大臣の退去命令は適法か違法か」です。
こういう場合、裁判所は、「法務大臣の裁量についての判断」を出すものなのです(上記の様に、「適法とは言えない」と判断して、退去命令を否定する事例も有ります)。

退去命令それ自体を発するのは、あくまで行政の仕事です。

強いて言うと、「これこれの在留許可を出したことは、違法と考える」という旨の訴えが起こされ、「その件についての大臣の裁量は、適法か違法か」を裁判所が検討し、そして「裁量権を逸脱する。適法とは言えない」と判決を出すことは、理屈では、一応、有り得るかも知れません。
ですが、その在留許可によって、直接被害を受ける人は有り得ない以上(言い換えると、直接被害を受ける人が、訴えを起こすことが出来ます)、実際には、そういう事例は無いと、断言出来ます。

尚、無関係な人間が、「あの在留許可によって精神的苦痛を受けた。違法だと考えるから差し止めてくれ」とか言って、訴えを起こしても、惨敗します(或る件について直接には無関係な人間が、抽象的な損害を理由に訴訟を起こして敗れた事例が、幾らでも有るようです)。
引き受ける弁護士も居ないかと考えます。


そして、ここがかなり重要と考えますが、勝訴した行政(国)側が、裁判で不存在が確定した一家に対する在留資格Aとは「別個の」在留資格Bを、姉妹に対して「新たに」付与したのが、今回の特別在留許可処分です。

新しい大臣が、裁判中は存在していなかった、然るべき在留資格を、姉妹に与えたのです。

つまり、大臣は、裁判の結果を覆した(逆らった)のではなく、前の大臣(或いは入管)の、姉妹に対して特別在留資格を出さなかった判断を変更したと言えます。

尚、一家が敗訴した裁判が、法務省が、一家に対して、在留特別許可を出さなかったことについて争点にしていたかどうかは、判決の詳細が見つかっていないので不明です(この点を争っていたとしても、「在留特別許可を出さないのは適法」或いは「出さないのは違法」という判断はしても、「出すべきではない」と指図することは、有り得ない筈です)。


この件について、「法務大臣の判断がおかしい」だの、「三権分立を否定している」だの、「独裁政権になる」だの、「法治が崩壊する」だの、「人治へ移行」だの、「これだから民主党は」だのと言っている人が、ネットを見ますとウヨウヨおいでですが(多分、その中には、戦前の日本を全肯定している人が、結構居るのでしょうがねえ?)。
「≪在留特別許可≫という制度が問題である」と言っている人は、滅多においでではありません(尚、私は、別に問題とは思いませんが)。
皆さん、過半は、事情を調べもせず、気分で発言しているのでしょうね。


在留特別許可は、ネットで調べてみましたら、年間でおよそ2000件、違法滞在の外国人に対して出されている由、書いてあるページが有りました。
また、以下のページでは、更に多い数字が有りました。
数年前(つまり自民党政権時代)のデータです。
http://www.geocities.jp/kumustaka85/20071007_zairyu.html

それが、どのような状況で出て、どのような状況で撥ねられているか、法務省の入管のウェブサイトなどでまとめてあるページが有りますから、ネットで調べてみると良いです(付記 コメント欄に追加致しました)。


以下は、私見ですが。

両親については、残留孤児関係の制度を、意図的に虚偽をもって悪用していたとしたら問題ですし、そうでなくても、手続きに不備が有ったなら手落ちです。
当時も今も大人なのですから、送還で妥当かも知れません。
まだ小さい、3人目の子供も、親が健在なのだから、彼らが引き続き育てるべきです。この年齢なら、いずれは、中国語も不自由無く操れるようになることでしょう。

ですが、問題の2人は、10年以上も前(1997年)、7歳と9歳の子供の頃に、親に連れられて日本に来て(つまり違法行為についての責任は問えない)、現在、19歳と21歳(成人目前と成人)になっているのです。
人生のほぼ半分を日本で過ごし、大学にまで入っているのです。
最初の退去命令が出た折(2003年9月)には、既に、13歳と15歳、中高生でした。
人生で一番頭の柔らかい時期を、日本で過ごしていたのです。
日本語も、当然身に付けている筈です。
一方、中国語の方は、聞くのと話すのはともかく、読み書きについては、ほとんど忘れてしまうことが予想されます。
中国語には表音文字が無く、表意文字(漢字)がびっしりです。8歳前後当時の知識を、実生活上ではほとんど使用しないのに、6年後に至るまで、いちいち覚えていられる訳が有りません。
この段階で中国に戻ったとしたら、中国語の読み書きは、小学1年レベルからやり直しという過酷な状態になると考えられます。

姉妹は、当時も、現在も、これから日本でやりたいことも有ったでしょうし、友達も、彼氏も出来ているかもしれません。
その、密度の濃い、数年から10年以上もの蓄積を、親の不始末が原因で、当人の希望に反し、強制的に消滅させ、今更、全く別の環境である中国でやり直せというのは、過度に厳しすぎ、彼女達の権利を不当に侵害する(或いは、彼女達のその権利を容認することによる日本側の不利益は存在しない)と言う判断でありましょう。

自分ではなく親の所為で、不安定な身の上になった人間2人を、国が、或る程度保護した、と言えば良いのですかね。

ところで。
この件で、千葉法相や、民主党を、「法治」や「三権分立」を理由に罵っておいでの皆さんは、かつて、検察への「指揮権発動」(これも合法には違いないです)をやらかし、身内への法の追求を潰してのけた自民党のことは、如何お考えになっておいでなのでしょうね。


参考
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1255158580/

                                                                                                          • -

中国人姉妹 敗訴後に在留許可
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=985784&media_id=2
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091010-00000004-maip-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000007-rcdc-cn

≪(毎日新聞 - 10月10日 02:12)

 残留孤児の子孫として両親と来日後に在留資格を取り消され、国外退去を命じられていた奈良市在住の中国人姉妹に、千葉景子法相は9日、在留特別許可を出した。最高裁で退去命令の取り消し請求訴訟の敗訴が確定しており、支援団体によると、敗訴確定後に在留を認められたのは埼玉県蕨市のフィリピン人、カルデロンのり子さん(14)ぐらいで、極めて異例。

 姉妹は、帝塚山大1年、北浦加奈(本名・焦春柳)さん(21)と、大阪経済法科大1年、陽子(同・焦春陽)さん(19)。退去命令は取り消され、定住者資格で1年間の在留が認められた。在留は独立して生計を営むなどの条件を満たせば更新できる。大阪入国管理局や支援団体によると、日本での就労が可能になり、再出入国許可を得れば中国などへの出国も認められる。

 姉妹は97年、母親(47)が「長崎県出身の中国残留孤児(故人)の四女」として、家族で中国・黒竜江省から正規に入国。その後、大阪入国管理局が「残留孤児とは血縁がないことが判明した」として一家の上陸許可を取り消し、03年9月に国外退去を命じられた。

 父親(43)が強制収容され、一家は同年12月、退去処分取り消しを求めて大阪地裁に提訴したが、1、2審で敗訴し、最高裁も上告を棄却。父親は大阪府内の高校に通う姉妹を残し、妻と来日後に生まれた三女の3人で中国に強制送還された。

 加奈さんは「紙一枚だが、(退去命令を受けてから)6年間の重みを感じる」。陽子さんは「家族に早く伝えたい」と話した。【田中龍士、茶谷亮】 ≫