国籍法改正問題

ニコ生に田中康夫氏 改正国籍法テーマに討論会
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=703049&media_id=32


簡単に整理してみるつもりでしたが、相当な長文になってしまいました。

改正は無事済みましたが、この問題、結構な騒動になっております。
ネットやmixi日記で検索しますと、感情的な拒否反応を示しておいでの方が多いこと多いこと。
多少、気が滅入りました。

しかし、「法律」に付いて、「人権」に付いて、「国家」に付いて、色々な事を勉強したり考察したりするきっかけとしては、少しは有意義だったかも知れません。
丁寧に見て回りますと、「当初は調べもせず騒いでしまった、恥ずかしい」という方もおいでの様子です。
不快この上無い目に遭われた現場の弁護士さんや、ピントのずれた内容の、FAXやメールを山の様に送りつけられた政治家さんたちは、お気の毒と言うしか有りませんが。

mixi日記にも、冷静なご意見を書かれ、尚且つコメント欄で熱心に異論の有る人をお相手しておいでの方々が居られますが、割合的には、詳しく調べているとは思えない文章を書かれておいでの方々が多い様です。
割れ窓理論」という考え方も有る事で、微力ながら、割れた窓を、手の届く範囲で、直してみたいと思います。
ちょい青臭いことも書きますがご勘弁を。

然るべきページへのリンクを張れば、簡単で良いのかも知れませんが、まあ、日記書くの、さぼりがちですしね。

基本的な知識と論点は、以下のウェブサイトでどうぞ。

【改正国籍法が成立=違憲判決受け結婚要件削除 - 速報 ニュース:@nifty
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-05X438/1.htm

まとめサイト
反対派
【国籍法改正案まとめWIKI
http://www19.atwiki.jp/kokuseki/pages/1.html
中立派
e-politics - 国籍法改正】
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/12.html
その「Web魚拓」
http://s04.megalodon.jp/2009-0104-2119-44/www7.atwiki.jp/epolitics/pages/12.html

mixiでの主要関連コミュニティ
【国籍法改正案に反対するコミュ】
http://mixi.jp/view_community.pl?id=3816028
【国籍法改正「賛成」コミュニティ】
http://mixi.jp/view_community.pl?id=3848476

この問題を、自分なりに調べてみまして、以下において、主な論点と思われる件に付世て記述致しました。
全部網羅は致しかねます。
細部にわたる詳細は、中立派のまとめサイトや、後で記載する参考ページでどうぞ。

尚、こちらにおいでの方で、下記の私の文章に、事実誤認以外で異論・反論がお有りの方は、関連のmixiコミュなどへお越し戴けましたら、御相手をして下さる方が見つかる筈です。
当方では、満足なご応対を致しかねますことを、予めお断りしておきます。

・「この改悪に反対しない人は性善説で甘いのではないか」という件に付いて。

司法府によって憲法違反とされた法は改正されねばならず、その改正案もまた、憲法違反であってはならないのです。
法を破る者の出現は当然推定されますが、それへの対処は、公正な手段で成されなければならず、救済が不当に成されない人が出てはなりません。
性悪説を採られる貴方の人権もまた、憲法によって保障されていることをお忘れ無きように願います。
例えば、警察や同様の官庁の権限が、飛躍的に向上した状況を想定されて下さい。
その任務の都合の前には人権など無きに等しく(例えば警察官による主観のみに基づいた逮捕・拘留や令状無しの強制捜査、容疑者への取調べでの拷問などが無制限で可能)、そして、結果として治安状態は好転し、犯罪の検挙率は向上し、それ以上に、微罪で罰を強いられたり冤罪で泣く人も増大した、そんな状況を望みますか?
それを、貴方が仮に望んでも、望まない人も居るということは弁えて下さい。そして、今の所、多数派は後者なのです。

【人権 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A8%A9

・「国会での採決前の様子がおかしい(2008年12月4日の参院法務委員会にて)」件に付いて。

いきなり、予定にも無いのに(ああいう場合、発言には事前の申請が必要なのですが、丸山議員はそれをしておられませんでした)喋り出す人が居ても、尊重はされません。
映像から音声が消えるのも、速記が止まるのも、ああいう場合、どんな事例でもそうです。
国籍法改正については、法制審議会に掛けられて、法務省案が了承されているそうです(その結果は広く公表されています)。
衆院の倍以上の審議時間を費やし十分審議は尽くした」(沢委員長・談)

・「民主党公明党が熱心に推進しているのが胡散臭いです」「麻生首相は関わっていないのでは?」という件について。

そもそも、事の起こりは違憲判決だったのだから、しょうがないのです。
違憲立法審査権を持つ司法府が、最高裁違憲判決を出したからには(これは戦後、「法令違憲」については、この件を含めて、今までで8件しか無いことだそうです)、立法府は、それに対応せざるを得ません。
日本は、三権分立の民主国家なのです。
自民党も、麻生首相を始め、この法改正に付いては把握した上で認めていることです(首相が関わっていないって話も有るそうですが、デマです)。

2008-12-04 ネット国士様へ、麻生首相あなたとは違うんです - 解決不能
http://d.hatena.ne.jp/hagakurekakugo/20081204/p1/

・「マスコミがろくに報道しないのが不自然である」件について。

発端となった国籍法違憲判決の際は、各紙で一面に載ったそうです。
法改正に付いても、各社、程度の差は有りますが、それなりに報道しています。
また、今回の改正は、違憲判決に比べれば小さなことであり、他に報道すべきことが複数有ったのです。

【国籍法改正に関する報道記事】
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/17.html

・「日本で就労したがる母親が、子供と法を悪用して、偽装認知が増えるのでは?」という懸念の件

法改正以前の状況でも、日本人の父に認知された子供(日本国籍の有無は問われません)と、その子を養育する外国人母には、条件に該当すれば、在留許可が取得出来ていました(強制送還を命じられた事例も有りましたが。それについての訴訟が、法改正の元となった違憲判決を出しました。尚、この事例では、判決前に、入管は強制送還の方針を変更し、「在留特別許可」を出しています)。

1996年7月30日、法務省は「日本人の実子を養育する外国人親の取扱について」定住者資格を与える旨の通達を出しています。

そして、法改正後は、国籍取得届(子供が認知され、日本在住を望むなら、国籍に関しての然るべき手続きをしない理由は有りません)と入管手続の双方をしなければならなくなり、入管と法務局の双方の審査を受けなければならなくなり、手続きがより複雑になります(後記しますが、破る法が増える分、問われる罪も重くなります)。
よって、偽装してくれる日本人男性を確保しにくくなり、虚偽認知が、より困難になったようです。

【いしけりあそび - Yahoo!ブログ】『○○○!知恵袋 国籍法は改悪なんでしょうか?』より。
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55815187.html

・「ばれても罪が軽いので問題が有る」と言う件について。

この場合、認知の申請において、複数の届出が必要になります。
よって、偽装認知に基づく国籍取得は、複数の罪を犯すことになります。
まず認知届を市町村に出す事によって公正証書原本不実記載罪、法務局に国籍取得届を出す事によって、この改正で新設される罰則、子の戸籍を編成する為に市町村(東京都なら特別区ということも)に国籍取得届を出す事により、公正証書原本不実記載罪に再び問われます。
刑法第47条の併合罪が適用となり、最高で7年6月以下の懲役、もしくは、120万円以下の罰金となります。
結構重いです。
勿論、偽装がばれれば、国籍取得も無しです。
そして、担当の役人は、それなりに厳しく裏を取ろうと追及します。
例えば、外国で生まれたとされる子供について、その外国に行った事が無いホームレスを買収して、偽装認知をさせるなどの杜撰な手段は、通用し得ません。
条件に合致する人間を探し、確保するのは、大変でしょうね。

《父に電話をしたり、知り合った経緯、別れた経緯等を根掘り葉掘り聞いたり、母子手帳に残された筆跡(母が日本語を書けないので、父がいろいろ書いているケースが多い)と母の持っている父のメモとの筆跡の照合、写真、養育費の請求状況なども調べて、怪しい場合は締め付けています。》
・【とにかく国籍法改正案が無事成立するようで一安心 - 土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。】(Prodigal_Sonさんのブログ)にて、isikeriasobiさんのコメントより。
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20081204/1228356960

・「人身売買や外国の工作員潜入の危険性」の件について。

犯罪者が、わざわざ役所に報告する様な、発覚し易い、より危険な方法を取る理由が有りません。
そもそも、買春をするのなら、やりたい当人が外国に行けば良いのであって、呼び寄せる積極的理由も有りません。
性的被搾取者を呼び寄せる事、或いは外国の工作員が潜入する事についても、外国人が日本国内に滞在するだけなら、観光ビザ、留学やビジネス、特別養子縁組(こちらについては、「定住者」になれるかどうかは年齢制限が有ります。それに適合しなければ通常の短期滞在しか出来ないようです)、そして婚姻(或いは、それに伴う連れ子)と、もっと実現し易い、色々な手が有ります。
日本国内に滞在し、然るべき要件を満たしていけば(尚、観光などでの短期での滞在では無理です)、「永住許可」も出ますし、国籍取得も出来ます。

法改正以前の状況では、日本人男性と外国人女性の間の出生後の子供を、前者が認知する事については、子供の両親の婚姻が要件であった訳です(尚、胎児認知ならば婚姻は要件ではなかった様です。胎児認知と生後認知で条件が違うのも法の下の平等に反します)。
思想的なオルグや買収や脅迫などで、偽装認知をしてくれる日本人男性を確保可能であるなら、同様に、偽装結婚してくれる日本人男性も確保可能と思われます(時間を掛ければ、本当に子供を作り、工作員に育成することも可能でしょうけどね)。
尚、偽装結婚は、同居の事実が確認出来れば良いので(それが出来ないと、真正の婚姻であっても、偽装が疑われることも有る由です)、様々な証明が必要となる偽装認知より、ばれにくい様です。

つまり、犯罪の可能性が前提であるなら、今回の法改正では、状況は特に悪化しません。
そして、この法改正によって、無責任な父親に捨てられた気の毒な子供が救済される可能性が高くなるのです。
よって、今回のこの法改正について、状況の好転以上に、悪用の危険を言い立てるのは、合理性が低いのです。

《「この改正によって、日本は以前よりもちょびっとだけ人権を大事にする国になります。これはとてもすてきなことです」
(【いしけりあそび】より
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55815187.html

尚、「以前からの法の仕組みがそもそもザルだから、然るべく改正しろ」との旨、主張するならば、また話は別です。
しかし、それを突き詰めると、もう、鎖国するしか無いかも知れません。
最低限、食料とエネルギーの自給自足が要件になりますが、それらがどうにかして達成出来るとしたら、それはそれで一つの選択肢です。

・「外国が工作員を潜り込ませて、国や自治体の政権や、議会のキャスティングボードを握る危険性」の懸念の件について。

上記の通り、ただでさえ相応の高さのハードルが有る上に、それを成し遂げるのに、どれだけの人数と予算が必要ですか。
そこまで膨大な数になる事は有り得ません(尚、この問題とは直接は無関係ですが、「移民1千万人」とやらは、現状、そう言っている政治家が居るってだけの話です)。
万一、そうなりかければ、政府も気付いて対処する筈です。

例えば、アイルランド市民は、英国での国政参政権を持っています。
そしてアイルランドは、伝統的に反英です。
さて、英国は、アイルランドに乗っ取られていますでしょうか。

《ホームレス・多重債務者で20年前に中国に行った人がそんなにいるでしょうか?
あるいは20年前に来日した中国人女性がそんなにいるでしょうか?
1人の女性が同時に生める子の数は多くて5,6人です。5年で6000万人が日本国籍を取れるわけがありません。》(中立派まとめサイトより)

・「法施行3年間は年齢制限すらありません。帰化した80歳を起点に祖国の親族全員を認知できてしまいます。よって3年間の年齢制限撤廃も無くすべきです」という件について。

そういう解釈は間違いであるようです。
あくまでも、法施行後3年の間、施行以前の過去における、20歳未満の時点で認知を受けていることを条件としています。

(【いしけりあそび】『改正法附則の解釈〜お勉強用&ついでに「まとめ」もさらしておく』
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/56066908.html

・「DNA鑑定が有れば一応安心だが、法に盛り込まれていないから問題である」と言う件。

国籍法への違憲判決が、そもそもの発端なので、詳しくない方でこの問題に興味のお有りの方は、そこからお調べになるべきですね。
ネットで検索されれば、幾らでも出て来ます。
何故、国籍法改正が、このような形で必要なのかと言う点も、詳細に書いてあります。

・【国籍法3条1項違憲訴訟 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%B1%8D%E6%B3%953%E6%9D%A11%E9%A0%85%E9%81%95%E6%86%B2%E8%A8%B4%E8%A8%9F
・【国籍法違憲判決全文】
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kokusekihouiekennzennbunn.htm

元の国籍法が、憲法に規定された「法の下の平等」に反していて、差別であり、違憲である由の判決が出たので、立法府側において、法改正の運びになったのです。
なのに、改正内容に、また差別的内容を盛り込んでは、これも違憲ということになりかねません。
日本人同士の夫婦(乃至夫婦以外)の子供について、DNA鑑定が、いちいち法(民法)に義務として記載されている訳ではないのに、この場合は法で義務付けたら、不公平で、差別なのです。
尚、この場合、立法府が法改正を怠ると、違憲判例が出ている以上、同様の判決が相次ぎます。違法性は明確であるのに窓口が違法行為をした為に、無駄な時間と費用と労力を費やす事になったと、国に対する国家賠償請求が認められてしまうことも有り得ます。
国会の「立法不作為責任」が、司法によって認められた前例も有るのです(ハンセン氏病裁判)。これについても、国家賠償請求が認められる可能性が有ります。

ちなみに、「認知」自体は民法家族法の範疇ですので、認知に当たって国籍法にDNA鑑定を盛り込め云々はお門違いです。
そして、認知において、血縁関係の認定は、そんなに重要ではないのです(後述の「代理母」問題でもそうでした)。

また、日本人男性と外国人女性の間の子供について、DNA鑑定による親子関係の証明が認知成立の要件になるとしたら、認知したがらない父親は、鑑定を拒むでしょうね(日本国内での日本人同士の事例でも、父親が拒否して逃げ回っていて、DNA鑑定が出来ず、外見だけの判断では母親が望む「強制認知」が成立しないという事例が有る様です)。
DNA鑑定を強制する事は、民事レベルでは、基本的に不可能です。
合意が成されたとしても、結構な高額になる筈の費用は、誰が負担するのかと言う問題も有ります(民事の場合、鑑定を望む側が負担するのが原則だそうです。仮に日本円で20万必要として、それは、日本国内の感覚でも大半の人にとっては高額ですし、国によっては、一般市民の年収にも匹敵する大金となります)。
また、男性が死んでいて、遺言で認知を望んでいる場合も有りますね。然るべきサンプルが無いと、DNA鑑定も出来ません。よって、成立すべき認知が成立しません。
これでは、法改正の意味が有りません。
父親の意思、父親が好意的であるか否か、或いは父親の生死(データの物理的な有無)で、子の国籍確認が左右されるとすれば、これは明らかに「法の下の平等」に反しており、差別です。

尚、家族法も国籍法も、憲法以下の法大系の内に有るのであり、「法の下の平等」が関わるこの場合、それはそれこれはこれと言う風には、区別は出来ないのです。

「日本人女性が日本人男性との間に生んだ子供への認知に関してのDNA鑑定の場合、父親への強制は出来ないし、行うにしても、女性がそれを望んだなら、望んだ側なのだから費用の負担をしなければならないのに(或いは、身に覚えの無い男性側が、潔白を晴らそうと、DNA鑑定を望む場合も有るでしょう)、外国人女性が日本人男性との間に生んだ子供への認知に関してのDNA鑑定の場合は、どちらかが拒否したがっても法によって原則として強制が出来、必要な費用は国が負担する」などということになったら、前者に対して不公平、そういうことも有り得ます。

代理母」(高田延彦氏・向井亜紀氏のご夫妻の例は、精子卵子ともに提供者ではあるが、卵子代理母のモノ、というパターンも存在します)という例も有ります。実母ではなく代理母に親権が認められているのです。
また、数年前に死亡した夫の凍結精子による人工授精で、誕生した子供はどうなりますのでしょうか。ちなみに裁判では、実子と認められていません。

血縁関係の認定を、或る判例や法律では重視しなかったのに、別の判例や法律では重視していたら、法のバランスが損なわれるのです。

尚、「法律の」下にも、政令とか省令とか都道府県条例とか官庁の運用規則とか実務上の運用基準とか、色々な取り決めが有るのです(「法律」と、これらを総称して、「法令」と呼びます)。厳密には「法令」ではない「訓令」というものも有ります。
監督官庁(この問題の場合、法務局と入国管理局)の役人(こういう方々は、基本的に、人を疑って掛かります)は、必要なら(偽装などの犯罪性が疑われるとかですね)、その権限において鑑定を行うでしょう。
警察・検察・裁判所に訴えることも有り得ます。そこで何らかの鑑定が出てくる事も有るでしょう(もっとも、DNA鑑定が、裁判で充分に活用されているかとなると、疑問ですが。一応、実際に、警察が令状を取ってDNA鑑定を求めたり、裁判所などがDNA鑑定を指示する事例は有ります)。

DNA鑑定その他の何らかの鑑定方法は、法律に盛り込むまでも無く、下位の法令や訓令、刑事捜査や裁判(それらの関連の法体系)における手続きなどにおいて、手段の一環として、既に組み込まれているのです。

《入国管理制度は、国籍制度とちがって、実体部分についても、その大部分が、法律によらずに決める構造になっている。告示、通達、実務の基準で、国民どころか国会の議論すらせずに、人の出入りを10万人単位で変えることができるのだ。日系人の受け入れ、外国人研修制度、技能実習制度、留学生や就学生、永住許可や在留特別許可の基準の変更、これまでもそうしてきた。》
(【いしけりあそび】『改正国籍法雑感』より
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/56046895.html

ちなみに、「離婚後300日問題」においても、DNA鑑定と法の関係について言及されました。
この問題に関しましては、以前、或る方の日記コメント欄で、私も、議論めいたことをしてみたものです。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=813034375&owner_id=545566&full

この件については、保守的な方向の皆さんが、「伝統的家族制度を破壊する」とかで、拒否反応を示されておりました。
今でも、例えば稲田議員(この方は、弁護士でもおありです)は、そこら辺は流石にお忘れではないようで、慎重な意見を示されておられます(ネットでの彼女の頁で詳しく読めます)。

衆議院議員 稲田朋美
http://www.inada-tomomi.com/index.html
『「 お知らせ」
国籍法改正案について 11月27日付け産経新聞・正論欄に執筆致しました。
国籍付与は国会の権限 −DNA鑑定は慎重に』
http://www.inada-tomomi.com/diarypro/diary.cgi

そして、現状では、DNA鑑定は、決して絶対的な信頼性が有る訳ではないということも、考えた方が良いかも知れません(0.02%の間違いが起こるそうです。また、未来には、より信頼性の高い、尚且つ低費用で済む、何らかの鑑定方法が確立されるかも知れません)。

・「改正法案に、認知した子供への扶養義務が盛り込まれていないのが問題である」「扶養事実の確認がなく、母から請求が無ければ扶養義務もないため、父は100人でも子作りできてしまう」件に付いて。

子供を認知したら、扶養の義務が発生する事は、民法家族法に明記されていることです(尚、親が病気や老齢で、子供が成人なら、子供の方にも親を扶養する義務が発生します)。
DNA鑑定の件と同様に、国籍法に記載するような事ではないのです。

尚、これは、「民法上の扶養義務が有るから、それをもって、改正された国籍法の偽装認知による悪用を積極的に抑止できる」という話では有りません。
「改正法案に、認知した子供への扶養義務が盛り込まれていないから、偽装認知によって悪用される危険性がより高くなる」という意見を、理屈になっていない、無意味であると、否定しているだけです。

認知した場合、法的に親子関係が成立するので、民法877条により扶養義務が発生します。国籍法に扶養義務について記載する意味が有りません。
また、生活保護法第4条2に基いて、生活保護は扶養義務者の扶養に優先できないので、扶養義務者に扶養能力がある場合、原則として、その子供に生活保護が支払われることは有りません。

認知した父親に、扶養能力が無い場合も有りますが、これは、別の問題です。
また、認知した当人が扶養義務を果たさない場合、三親等までに通告と請求が行きます。払わないと財産の差し押さえ、ということも有るようです。当人は児童虐待で逮捕もされかねません。
それと、認知には扶養義務がセットです。扶養義務を果たす意思がないのであれば、認知する意思もないと推認できます。認知意思がない認知は、真実の親子関係であっても、無効となります。
また、1人が、あまりにも不自然に多数の認知を試みたら、偽装を怪しまれるのは必定です。

・「認知前の、日本国籍を認められる前の子供は、厳密には日本人ではないから、差別ではない。よって違憲ではない」と言う件について。

この場合、「日本人ではない」という結論を先取りして解答を出してしまっては、拙いのです。
また、憲法の人権規定は、外国人にも及びます。家族法に付いても同様です(外国人に、法の支配と法の保護を及ぼすことが出来ないなら、例えば、外国人の犯罪に刑法を適用させる事も出来ません)。

マクリーン事件 - Wikipedia】 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

そして今回の改正は、「法の下の平等という法理に基づけば、本来国籍を認められて然るべき子供に国籍が認められていない」という、法の不備を、立法技術的に解消するものでもあるのです。

日本が「批准」(「批准」とは、条約に沿った、然るべき国内法を整えることを要件とします)している条約に、以下のようなものが有ります。
「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第24条第1項
児童の権利に関する条約」第2条第1項
《出生によっていかなる差別も受けない》
付け加えますと、国際法を尊重する旨、日本国憲法に、これも明記してあります。
【日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする】

・「なんで馬鹿な男が外国で勝手に作った子供に、国籍と生活保護を渡さなきゃならないのか。税金が勿体無い」という件について。

国籍に付いては、日本人の子供に対しては、当然の配慮です。
生活保護に付きましては、認知された子供とその母親に付いて、総てがそれを必要とすることになる事例である訳も有りませんが。
認知により父子関係が認められれば、民法上の規定により、「父」に扶養義務が発生しますし、「父」がいる以上、簡単に生活保護は受給できません。

http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2008/11/post-89a9.html

そして、仮にですね。
「日本人男性が、日本人女性との間に生んだ子供に対する扶養義務を、何らかの形で果たさず、子供とその子を抱えた母親が赤貧に喘いでいる場合、生活保護で救済するべきである。
だが、子供の母親が外国人女性の場合なら、見殺しにしても良い。」
そういう考えであるなら、それを、こう言います。
「差別」。

以下は、私見ですが。

DNA鑑定については、国や裁判所がもっと重視すれば、或いは、例えば、捜査段階で冤罪が発生しなかったり、裁判で冤罪が晴れたり、真犯人を確定する一助になったりする事例が増えるかも知れないと私は思っておりますので、その点において、私は、DNA鑑定を、闇雲に否定する立場ではありません(信頼性はより高く、必要な費用はより安価になって欲しいですが)。

全国民にそれを義務付ければ、憲法上の不公平の問題は無くなります(過渡期において、DNAデータが無い人間の死後認知の問題をどうするかという課題は残りますが)。
防犯効果も相応に有るでしょうし、或いは、医療関係での何かの移植などに関しても役立つかも知れません。
「究極の個人情報たるDNAを、しかも全国民のそれを、国に管理させるのは、気持ち悪い」という問題も有りますが、ね。

この法改正にご不満な向きの方々が、「生活保護制度を全廃しろ」とか、「全国民へのDNA検査を、費用は国家負担で、一律で義務付けろ」とか言われるとするなら、一応、辻褄は合います。
しかし、政治思想で考えてみますとね。
「小さな政府」がお好きなら、前者希望で当然。
大きな政府」がお好きなら、後者希望もアリでしょう。
でも、前者・後者双方をご希望としたら、それは、矛盾するのです。

上記以外で参考にしたウェブサイト
(コメント欄が有る場合、そちらの質疑応答や議論も是非どうぞ。勉強になります)

・【半可思惟】
『国籍法改正について語るための基礎知識(1):違憲判決の図解』
http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20081115/1226728277
『国籍法改正について語るための基礎知識(2):裁判官たちは何を争い、何を国会に託したのか』
http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20081116/1226827321

・【いしけりあそび - Yahoo!ブログ】
『どうしてもDNA鑑定が気になるけど、冷静に、法的な思考をする準備はあるよ、という方へ』
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55832025.html
『disるだけもどうかと思うので、外国法に関するちょっとした情報も書きました。』
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55872551.html

・【la_causette】(小倉先生のブログ)
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/

・【バーチャルネット思想アイドルやえ十四歳】
『国籍法改正についての考え方』
http://www.amaochi.com/yae_log147.html#081117

・【国籍法におけるDNA鑑定問題について - extra innings】
http://d.hatena.ne.jp/iteau/20081124/p1

・【認知するのにDNA検査を義務付けろとか簡単に言ってる人がわかっていないこと - 捨身成仁日記 炎と激情の豆知識ブログ!】
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20081126/p1

・【国籍法改正のどこが問題かわからねえんだけどね。 - NC-15】
http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20081207/1228622596

・【国籍法改正反対ビラのスレッドが凄い事になっている件 - 解決不能
http://d.hatena.ne.jp/hagakurekakugo/20081207/p2

【404 Blog Not FoundNews - 改正国籍法成立 - 不可解な日本人の外国人感】
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51148232.html

・【国籍法 (日本) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%B1%8D%E6%B3%95_(%E6%97%A5%E6%9C%AC)

・【国籍法改正案が明日成立するようですね・・・。 - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1421162439

・【(国籍法改正関連)民法で定める扶養義務について - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1420915664

・【ダイちゃん事件資料集】
http://www.asahi-net.or.jp/~ky2o-sksk/daichan/

・【journalist-net:「国際婚外子訴訟」最高裁判決に思う:崎阪治】
http://jnetmore.blog50.fc2.com/blog-entry-14.html#more

・【2ちゃんねるネット右翼ウォッチング&その分析 国籍法改正とネトウヨの「朝鮮人襲来」】
http://blog.goo.ne.jp/ngc2497/e/3c0f636ef5f7708871080bdc8e7fe68d

・【日本人が増えるとなにかまずいのか?|六本木で働いていた元社長のアメブロ
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10174359176.html

・幾つかのmixi日記(「国籍法」「認知」「違憲」などのキーワードで検索しました)

・【五十嵐行政書士事務所 外国人在留永住帰化 より安定した生活のための資格として】  
http://www.office-igarashi.com/gaikoku/gaikoku_detail_04.html


【誰かの妄想・はてな版 2008-12-09 国籍法改正に関する馬鹿げた妄想】
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20081209/1228835600

《さらに、日本人が関与するのは、最初の1回だけ 日本国籍取得すればその元外人も日本人になるから、あとはネズミ算的に認知できる》

これへのツッコミ。

《最初の1回で日本国籍を取得できるのは、20歳未満の未成年だけ。せいぜい、もう一度認知できる程度だろう》


【バーチャルネット思想アイドルやえ十四歳 ☆国籍法改正に関する動きについて☆】(国籍法関係のまとめページ
http://www.amaochi.com/news/yae_log_kokusekihou.html

ニコ生に田中康夫氏 改正国籍法テーマに討論会
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=703049&media_id=32


簡単に整理してみるつもりでしたが、相当な長文になってしまいました。

改正は無事済みましたが、この問題、結構な騒動になっております。
ネットやmixi日記で検索しますと、感情的な拒否反応を示しておいでの方が多いこと多いこと。
多少、気が滅入りました。

しかし、「法律」に付いて、「人権」に付いて、「国家」に付いて、色々な事を勉強したり考察したりするきっかけとしては、少しは有意義だったかも知れません。
丁寧に見て回りますと、「当初は調べもせず騒いでしまった、恥ずかしい」という方もおいでの様子です。
不快この上無い目に遭われた現場の弁護士さんや、ピントのずれた内容の、FAXやメールを山の様に送りつけられた政治家さんたちは、お気の毒と言うしか有りませんが。

mixi日記にも、冷静なご意見を書かれ、尚且つコメント欄で熱心に異論の有る人をお相手しておいでの方々が居られますが、割合的には、詳しく調べているとは思えない文章を書かれておいでの方々が多い様です。
割れ窓理論」という考え方も有る事で、微力ながら、割れた窓を、手の届く範囲で、直してみたいと思います。
ちょい青臭いことも書きますがご勘弁を。

然るべきページへのリンクを張れば、簡単で良いのかも知れませんが、まあ、日記書くの、さぼりがちですしね。

基本的な知識と論点は、以下のウェブサイトでどうぞ。

【改正国籍法が成立=違憲判決受け結婚要件削除 - 速報 ニュース:@nifty
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-05X438/1.htm

まとめサイト
反対派
【国籍法改正案まとめWIKI
http://www19.atwiki.jp/kokuseki/pages/1.html
中立派
e-politics - 国籍法改正】
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/12.html
その「Web魚拓」
http://s04.megalodon.jp/2009-0104-2119-44/www7.atwiki.jp/epolitics/pages/12.html

mixiでの主要関連コミュニティ
【国籍法改正案に反対するコミュ】
http://mixi.jp/view_community.pl?id=3816028
【国籍法改正「賛成」コミュニティ】
http://mixi.jp/view_community.pl?id=3848476

この問題を、自分なりに調べてみまして、以下において、主な論点と思われる件に付世て記述致しました。
全部網羅は致しかねます。
細部にわたる詳細は、中立派のまとめサイトや、後で記載する参考ページでどうぞ。

尚、こちらにおいでの方で、下記の私の文章に、事実誤認以外で異論・反論がお有りの方は、関連のmixiコミュなどへお越し戴けましたら、御相手をして下さる方が見つかる筈です。
当方では、満足なご応対を致しかねますことを、予めお断りしておきます。

・「この改悪に反対しない人は性善説で甘いのではないか」という件に付いて。

司法府によって憲法違反とされた法は改正されねばならず、その改正案もまた、憲法違反であってはならないのです。
法を破る者の出現は当然推定されますが、それへの対処は、公正な手段で成されなければならず、救済が不当に成されない人が出てはなりません。
性悪説を採られる貴方の人権もまた、憲法によって保障されていることをお忘れ無きように願います。
例えば、警察や同様の官庁の権限が、飛躍的に向上した状況を想定されて下さい。
その任務の都合の前には人権など無きに等しく(例えば警察官による主観のみに基づいた逮捕・拘留や令状無しの強制捜査、容疑者への取調べでの拷問などが無制限で可能)、そして、結果として治安状態は好転し、犯罪の検挙率は向上し、それ以上に、微罪で罰を強いられたり冤罪で泣く人も増大した、そんな状況を望みますか?
それを、貴方が仮に望んでも、望まない人も居るということは弁えて下さい。そして、今の所、多数派は後者なのです。

【人権 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A8%A9

・「国会での採決前の様子がおかしい(2008年12月4日の参院法務委員会にて)」件に付いて。

いきなり、予定にも無いのに(ああいう場合、発言には事前の申請が必要なのですが、丸山議員はそれをしておられませんでした)喋り出す人が居ても、尊重はされません。
映像から音声が消えるのも、速記が止まるのも、ああいう場合、どんな事例でもそうです。
国籍法改正については、法制審議会に掛けられて、法務省案が了承されているそうです(その結果は広く公表されています)。
衆院の倍以上の審議時間を費やし十分審議は尽くした」(沢委員長・談)

・「民主党公明党が熱心に推進しているのが胡散臭いです」「麻生首相は関わっていないのでは?」という件について。

そもそも、事の起こりは違憲判決だったのだから、しょうがないのです。
違憲立法審査権を持つ司法府が、最高裁違憲判決を出したからには(これは戦後、「法令違憲」については、この件を含めて、今までで8件しか無いことだそうです)、立法府は、それに対応せざるを得ません。
日本は、三権分立の民主国家なのです。
自民党も、麻生首相を始め、この法改正に付いては把握した上で認めていることです(首相が関わっていないって話も有るそうですが、デマです)。

2008-12-04 ネット国士様へ、麻生首相あなたとは違うんです - 解決不能
http://d.hatena.ne.jp/hagakurekakugo/20081204/p1/

・「マスコミがろくに報道しないのが不自然である」件について。

発端となった国籍法違憲判決の際は、各紙で一面に載ったそうです。
法改正に付いても、各社、程度の差は有りますが、それなりに報道しています。
また、今回の改正は、違憲判決に比べれば小さなことであり、他に報道すべきことが複数有ったのです。

【国籍法改正に関する報道記事】
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/17.html

・「日本で就労したがる母親が、子供と法を悪用して、偽装認知が増えるのでは?」という懸念の件

法改正以前の状況でも、日本人の父に認知された子供(日本国籍の有無は問われません)と、その子を養育する外国人母には、条件に該当すれば、在留許可が取得出来ていました(強制送還を命じられた事例も有りましたが。それについての訴訟が、法改正の元となった違憲判決を出しました。尚、この事例では、判決前に、入管は強制送還の方針を変更し、「在留特別許可」を出しています)。

1996年7月30日、法務省は「日本人の実子を養育する外国人親の取扱について」定住者資格を与える旨の通達を出しています。

そして、法改正後は、国籍取得届(子供が認知され、日本在住を望むなら、国籍に関しての然るべき手続きをしない理由は有りません)と入管手続の双方をしなければならなくなり、入管と法務局の双方の審査を受けなければならなくなり、手続きがより複雑になります(後記しますが、破る法が増える分、問われる罪も重くなります)。
よって、偽装してくれる日本人男性を確保しにくくなり、虚偽認知が、より困難になったようです。

【いしけりあそび - Yahoo!ブログ】『○○○!知恵袋 国籍法は改悪なんでしょうか?』より。
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55815187.html

・「ばれても罪が軽いので問題が有る」と言う件について。

この場合、認知の申請において、複数の届出が必要になります。
よって、偽装認知に基づく国籍取得は、複数の罪を犯すことになります。
まず認知届を市町村に出す事によって公正証書原本不実記載罪、法務局に国籍取得届を出す事によって、この改正で新設される罰則、子の戸籍を編成する為に市町村(東京都なら特別区ということも)に国籍取得届を出す事により、公正証書原本不実記載罪に再び問われます。
刑法第47条の併合罪が適用となり、最高で7年6月以下の懲役、もしくは、120万円以下の罰金となります。
結構重いです。
勿論、偽装がばれれば、国籍取得も無しです。
そして、担当の役人は、それなりに厳しく裏を取ろうと追及します。
例えば、外国で生まれたとされる子供について、その外国に行った事が無いホームレスを買収して、偽装認知をさせるなどの杜撰な手段は、通用し得ません。
条件に合致する人間を探し、確保するのは、大変でしょうね。

《父に電話をしたり、知り合った経緯、別れた経緯等を根掘り葉掘り聞いたり、母子手帳に残された筆跡(母が日本語を書けないので、父がいろいろ書いているケースが多い)と母の持っている父のメモとの筆跡の照合、写真、養育費の請求状況なども調べて、怪しい場合は締め付けています。》
・【とにかく国籍法改正案が無事成立するようで一安心 - 土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。】(Prodigal_Sonさんのブログ)にて、isikeriasobiさんのコメントより。
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20081204/1228356960

・「人身売買や外国の工作員潜入の危険性」の件について。

犯罪者が、わざわざ役所に報告する様な、発覚し易い、より危険な方法を取る理由が有りません。
そもそも、買春をするのなら、やりたい当人が外国に行けば良いのであって、呼び寄せる積極的理由も有りません。
性的被搾取者を呼び寄せる事、或いは外国の工作員が潜入する事についても、外国人が日本国内に滞在するだけなら、観光ビザ、留学やビジネス、特別養子縁組(こちらについては、「定住者」になれるかどうかは年齢制限が有ります。それに適合しなければ通常の短期滞在しか出来ないようです)、そして婚姻(或いは、それに伴う連れ子)と、もっと実現し易い、色々な手が有ります。
日本国内に滞在し、然るべき要件を満たしていけば(尚、観光などでの短期での滞在では無理です)、「永住許可」も出ますし、国籍取得も出来ます。

法改正以前の状況では、日本人男性と外国人女性の間の出生後の子供を、前者が認知する事については、子供の両親の婚姻が要件であった訳です(尚、胎児認知ならば婚姻は要件ではなかった様です。胎児認知と生後認知で条件が違うのも法の下の平等に反します)。
思想的なオルグや買収や脅迫などで、偽装認知をしてくれる日本人男性を確保可能であるなら、同様に、偽装結婚してくれる日本人男性も確保可能と思われます(時間を掛ければ、本当に子供を作り、工作員に育成することも可能でしょうけどね)。
尚、偽装結婚は、同居の事実が確認出来れば良いので(それが出来ないと、真正の婚姻であっても、偽装が疑われることも有る由です)、様々な証明が必要となる偽装認知より、ばれにくい様です。

つまり、犯罪の可能性が前提であるなら、今回の法改正では、状況は特に悪化しません。
そして、この法改正によって、無責任な父親に捨てられた気の毒な子供が救済される可能性が高くなるのです。
よって、今回のこの法改正について、状況の好転以上に、悪用の危険を言い立てるのは、合理性が低いのです。

《「この改正によって、日本は以前よりもちょびっとだけ人権を大事にする国になります。これはとてもすてきなことです」
(【いしけりあそび】より
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55815187.html

尚、「以前からの法の仕組みがそもそもザルだから、然るべく改正しろ」との旨、主張するならば、また話は別です。
しかし、それを突き詰めると、もう、鎖国するしか無いかも知れません。
最低限、食料とエネルギーの自給自足が要件になりますが、それらがどうにかして達成出来るとしたら、それはそれで一つの選択肢です。

・「外国が工作員を潜り込ませて、国や自治体の政権や、議会のキャスティングボードを握る危険性」の懸念の件について。

上記の通り、ただでさえ相応の高さのハードルが有る上に、それを成し遂げるのに、どれだけの人数と予算が必要ですか。
そこまで膨大な数になる事は有り得ません(尚、この問題とは直接は無関係ですが、「沖縄に1千万人」とやらは、現状、そう言っている政治家が居るってだけの話です。しかも、移民ではなく、観光客についてです)。
万一、そうなりかければ、政府も気付いて対処する筈です。

例えば、アイルランド市民は、英国での国政参政権を持っています。
そしてアイルランドは、伝統的に反英です。
さて、英国は、アイルランドに乗っ取られていますでしょうか。

《ホームレス・多重債務者で20年前に中国に行った人がそんなにいるでしょうか?
あるいは20年前に来日した中国人女性がそんなにいるでしょうか?
1人の女性が同時に生める子の数は多くて5,6人です。5年で6000万人が日本国籍を取れるわけがありません。》(中立派まとめサイトより)

・「法施行3年間は年齢制限すらありません。帰化した80歳を起点に祖国の親族全員を認知できてしまいます。よって3年間の年齢制限撤廃も無くすべきです」という件について。

そういう解釈は間違いである様です。
あくまでも、法施行後3年の間、施行以前の過去における、20歳未満の時点で認知を受けている事を条件としています。

(【いしけりあそび】『改正法附則の解釈〜お勉強用&ついでに「まとめ」もさらしておく』
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/56066908.html

・「DNA鑑定が有れば一応安心だが、法に盛り込まれていないから問題である」と言う件。

国籍法への違憲判決が、そもそもの発端なので、詳しくない方でこの問題に興味のお有りの方は、そこからお調べになるべきですね。
ネットで検索されれば、幾らでも出て来ます。
何故、国籍法改正が、このような形で必要なのかと言う点も、詳細に書いてあります。

・【国籍法3条1項違憲訴訟 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%B1%8D%E6%B3%953%E6%9D%A11%E9%A0%85%E9%81%95%E6%86%B2%E8%A8%B4%E8%A8%9F
・【国籍法違憲判決全文】
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kokusekihouiekennzennbunn.htm

元の国籍法が、憲法に規定された「法の下の平等」に反していて、差別であり、違憲である由の判決が出たので、立法府側において、法改正の運びになったのです。
なのに、改正内容に、また差別的内容を盛り込んでは、これも違憲ということになりかねません。
日本人同士の夫婦(乃至夫婦以外)の子供について、DNA鑑定が、いちいち法(民法)に義務として記載されている訳ではないのに、この場合は法で義務付けたら、不公平で、差別なのです。
尚、この場合、立法府が法改正を怠ると、違憲判例が出ている以上、同様の判決が相次ぎます。違法性は明確であるのに窓口が違法行為をした為に、無駄な時間と費用と労力を費やす事になったと、国に対する国家賠償請求が認められてしまうことも有り得ます。
国会の「立法不作為責任」が、司法によって認められた前例も有るのです(ハンセン氏病裁判)。これについても、国家賠償請求が認められる可能性が有ります。

ちなみに、「認知」自体は民法家族法の範疇ですので、認知に当たって国籍法にDNA鑑定を盛り込め云々は、お門違いです。
そして、認知において、血縁関係の認定は、そんなに重要ではないのです(後述の「代理母」問題でもそうでした)。

また、日本人男性と外国人女性の間の子供について、DNA鑑定による親子関係の証明が認知成立の要件になるとしたら、認知したがらない父親は、鑑定を拒むでしょうね(日本国内での日本人同士の事例でも、父親が拒否して逃げ回っていて、DNA鑑定が出来ず、外見だけの判断では母親が望む「強制認知」が成立しないという事例が有る様です)。
DNA鑑定を強制する事は、民事レベルでは、基本的に不可能です。
合意が成されたとしても、結構な高額になる筈の費用は、誰が負担するのかと言う問題も有ります(民事の場合、鑑定を望む側が負担するのが原則だそうです。仮に日本円で20万必要として、それは、日本国内の感覚でも大半の人にとっては高額ですし、国によっては、一般市民の年収にも匹敵する大金となります)。
また、男性が死んでいて、遺言で認知を望んでいる場合も有りますね。然るべきサンプルが無いと、DNA鑑定も出来ません。よって、成立すべき認知が成立しません。
これでは、法改正の意味が有りません。
父親の意思、父親が好意的であるか否か、或いは父親の生死(データの物理的な有無)で、子の国籍確認が左右されるとすれば、これは明らかに「法の下の平等」に反しており、差別です。

尚、家族法も国籍法も、憲法以下の法大系の内に有るのであり、「法の下の平等」が関わるこの場合、それはそれこれはこれと言う風には、区別は出来ないのです。

「日本人女性が日本人男性との間に生んだ子供への認知に関してのDNA鑑定の場合、父親への強制は出来ないし、行うにしても、女性がそれを望んだなら、望んだ側なのだから費用の負担をしなければならないのに(或いは、身に覚えの無い男性側が、潔白を晴らそうと、DNA鑑定を望む場合も有るでしょう)、外国人女性が日本人男性との間に生んだ子供への認知に関してのDNA鑑定の場合は、どちらかが拒否したがっても法によって原則として強制が出来、必要な費用は国が負担する」などということになったら、前者に対して不公平、そういうことも有り得ます。

代理母」(高田延彦氏・向井亜紀氏のご夫妻の例は、精子卵子ともに提供者ではあるが、卵子代理母のモノ、というパターンも存在します)という例も有ります。実母ではなく代理母に親権が認められているのです。
また、数年前に死亡した夫の凍結精子による人工授精で、誕生した子供はどうなりますのでしょうか。ちなみに裁判では、実子と認められていません。

血縁関係の認定を、或る判例や法律では重視しなかったのに、別の判例や法律では重視していたら、法のバランスが損なわれるのです。

尚、「法律の」下にも、政令とか省令とか都道府県条例とか官庁の運用規則とか実務上の運用基準とか、色々な取り決めが有るのです(「法律」と、これらを総称して、「法令」と呼びます)。厳密には「法令」ではない「訓令」というものも有ります。
監督官庁(この問題の場合、法務局と入国管理局)の役人(こういう方々は、基本的に、人を疑って掛かります)は、必要なら(偽装などの犯罪性が疑われるとかですね)、その権限において鑑定を行うでしょう。
警察・検察・裁判所に訴えることも有り得ます。そこで何らかの鑑定が出てくる事も有るでしょう(もっとも、DNA鑑定が、裁判で充分に活用されているかとなると、疑問ですが。一応、実際に、警察が令状を取ってDNA鑑定を求めたり、裁判所などがDNA鑑定を指示する事例は有ります)。

DNA鑑定その他の何らかの鑑定方法は、法律に盛り込むまでも無く、下位の法令や訓令、刑事捜査や裁判(それらの関連の法体系)における手続きなどにおいて、手段の一環として、既に組み込まれているのです。

《入国管理制度は、国籍制度とちがって、実体部分についても、その大部分が、法律によらずに決める構造になっている。告示、通達、実務の基準で、国民どころか国会の議論すらせずに、人の出入りを10万人単位で変えることができるのだ。日系人の受け入れ、外国人研修制度、技能実習制度、留学生や就学生、永住許可や在留特別許可の基準の変更、これまでもそうしてきた。》
(【いしけりあそび】『改正国籍法雑感』より
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/56046895.html

ちなみに、「離婚後300日問題」においても、DNA鑑定と法の関係について言及されました。
この問題に関しましては、以前、或る方の日記コメント欄で、私も、議論めいたことをしてみたものです。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=813034375&owner_id=545566&full

この件については、保守的な方向の皆さんが、「伝統的家族制度を破壊する」とかで、拒否反応を示されておりました。
今でも、例えば稲田議員(この方は、弁護士でもおありです)は、そこら辺は流石にお忘れではないようで、慎重な意見を示されておられます(ネットでの彼女の頁で詳しく読めます)。

衆議院議員 稲田朋美
http://www.inada-tomomi.com/index.html
『「 お知らせ」
国籍法改正案について 11月27日付け産経新聞・正論欄に執筆致しました。
国籍付与は国会の権限 −DNA鑑定は慎重に』
http://www.inada-tomomi.com/diarypro/diary.cgi

そして、現状では、DNA鑑定は、決して絶対的な信頼性が有る訳ではないということも、考えた方が良いかも知れません(0.02%の間違いが起こるそうです。また、未来には、より信頼性の高い、尚且つ低費用で済む、何らかの鑑定方法が確立されるかも知れません)。

・「改正法案に、認知した子供への扶養義務が盛り込まれていないのが問題である」「扶養事実の確認がなく、母から請求が無ければ扶養義務もないため、父は100人でも子作りできてしまう」件に付いて。

子供を認知したら、扶養の義務が発生する事は、民法家族法に明記されていることです(尚、親が病気や老齢で、子供が成人なら、子供の方にも親を扶養する義務が発生します)。
DNA鑑定の件と同様に、国籍法に記載するような事ではないのです。

尚、これは、「民法上の扶養義務が有るから、それをもって、改正された国籍法の偽装認知による悪用を積極的に抑止できる」という話では有りません。
「改正法案に、認知した子供への扶養義務が盛り込まれていないから、偽装認知によって悪用される危険性がより高くなる」という意見を、理屈になっていない、無意味であると、否定しているだけです。

認知した場合、法的に親子関係が成立するので、民法877条により扶養義務が発生します。国籍法に扶養義務について記載する意味が有りません。
また、生活保護法第4条2に基いて、生活保護は扶養義務者の扶養に優先できないので、扶養義務者に扶養能力がある場合、原則として、その子供に生活保護が支払われることは有りません。

認知した父親に、扶養能力が無い場合も有りますが、これは、別の問題です。
また、認知した当人が扶養義務を果たさない場合、三親等までに通告と請求が行きます。払わないと財産の差し押さえ、ということも有るようです。当人は児童虐待で逮捕もされかねません。
それと、認知には扶養義務がセットです。扶養義務を果たす意思がないのであれば、認知する意思もないと推認できます。認知意思がない認知は、真実の親子関係であっても、無効となります。
また、1人が、あまりにも不自然に多数の認知を試みたら、偽装を怪しまれるのは必定です。

・「認知前の、日本国籍を認められる前の子供は、厳密には日本人ではないから、差別ではない。よって違憲ではない」と言う件について。

この場合、「日本人ではない」という結論を先取りして解答を出してしまっては、拙いのです。
また、憲法の人権規定は、外国人にも及びます。家族法に付いても同様です(外国人に、法の支配と法の保護を及ぼすことが出来ないなら、例えば、外国人の犯罪に刑法を適用させる事も出来ません)。

マクリーン事件 - Wikipedia】 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

そして今回の改正は、「法の下の平等という法理に基づけば、本来国籍を認められて然るべき子供に国籍が認められていない」という、法の不備を、立法技術的に解消するものでもあるのです。

日本が「批准」(「批准」とは、条約に沿った、然るべき国内法を整えることを要件とします)している条約に、以下のようなものが有ります。
「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第24条第1項
児童の権利に関する条約」第2条第1項
《出生によっていかなる差別も受けない》
付け加えますと、国際法を尊重する旨、日本国憲法に、これも明記してあります。
【日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする】


字数制限に引っかかりましたので、続きはコメント欄に書きます。